失語症の新しいリハビリ教材「連続的聴理解訓練」【アプリ】

高次脳機能障害に使えるアプリ
アプリん
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短文理解の正答率は上がったけど
会話に汎化していないよお…

アプリん
アプリん

SLTA口頭命令で低下があるけど
どんな訓練をしたらいいの?

リハくん
リハくん

うんうん、あるあるだよね。
連続的聴理解の訓練があるよ!

文の理解はよくなったけれど、
会話に汎化しない

SLTAの口頭命令のみ成績低下しているけど
どんな訓練をしたらいいかわからない

そんな失語症者の方を担当したことがある人も多いのではないでしょうか。

そのような方には、この記事で紹介する
連続的聴覚処理課題が効果的かもしれません

この訓練法の原案は数年前に原著論文で紹介されています。

前半では、その論文の要点を説明します。
後半部分で、連続的処理に着目したパワポ教材を紹介します。

この記事を読めば、
聴覚的把持力、助詞の理解、動作語の理解に加えて「処理速度」という新たな視点が
増えることと思います。

なお、後半で紹介するパワポ教材は
販売も行っています。

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連続的な聴覚的理解の文献紹介

本記事では次の文献を紹介します。

文の聴理解に影響を及ぼす因子について-SLTA「口頭命令に従う」の分析を通して-

とても丁寧に研究されていますので、
ぜひ一読してくださればと思います。

ここでは連続的聴覚的処理に関する部分のみ
紹介させていただきます。

結論:文理解には連続的な聴覚処理能力が必要

1秒間隔の聴理解
健常群30/30
失語群3/30
対象群ごとの連続的な聴覚理解の差(単位:個)

結論を、最初に述べさせていただきます。

健常群は、
言葉を連続で迅速に処理することが可能
会話中に理解が滞ることは少ない。
論文での検討方法の一つとして、1秒間隔で提示される聴覚的理解を指差す課題を実施。
健常群は30/30正答

しかし失語症者はこの連続的な処理が苦手
そのため、単語や短文では理解が可能でも、会話や物品操作では困難な方が多い。
論文では、失語症者に健常群と同じ課題を実施。
その結果、3/30正答

このように、失語症者は連続的な処理が苦手であると考えられる。
連続的な聴覚処理能力を向上すれば
会話の理解能力が改善する可能性あり。

連続的な処理がなぜ重要か

連続的な聴覚的処理について、
具体例を挙げて説明します。

短文提示:「男の人がリンゴを食べる」
これは3つの単語
【男の人、りんご、食べる】が
理解できれば絵カードの選択ができます。
極端に言うと、連続的な処理が3つできれば理解することが可能です。


一方で、会話場面で

「昨日の昼ごはんは生姜焼きでしたね。
美味しかったですか」

という質問をしたとすると、
【昨日、昼ごはん、生姜焼き、
美味しい、ですか】

という、4〜5単語の処理が必要です。
これでは連続的処理が追いつかなくなり、
理解ができなくなる可能性が高いです。

注意点として、
これは聴覚的把持力ではなく、
連続で聞こえてくる単語を
素早く処理できるかの話です。

文献をもとに根拠を提示

文献を要約したものを述べますね。
まず、対象者と比較対象者を示します。
論文内容全ては説明できません。
ここでは3つの方法と結果/考察に絞って記載します。


対象者
以下の全てを満たす失語症者10名
・注意評価(BAAD)にて、0点(良好)
・SLTAで、刺激完了前に行動しない
・SLTAの単語の聴覚的理解で全問正答
・SLTAの口頭命令で9/10以下の正答
・RCPMにて平均点以上を獲得


比較対象
健常群10名

coveredopened
失語群1.62.1
健常群3.95.4
聴覚的把持力における対象群の差(単位:個)

方法聴覚的把持力検査を用いて
・絵カードを見せず(covered)の
聴覚的把持力検査 n/6選択
・絵カードを見せて(opened)の
聴覚的把持力検査 n/6選択
正答率7割以上で1つずつ増やしていく


結果
失語症群では
coveredでは1.6個
openedでは2.1個
上記二つに有意差はなし

健常群では、
coveredでは3.9個
openedでは5.4個
上記二つでは、有意差あり

失語症群と健常群では、
ccovered、openedそれぞれで有意差あり


考察
健常群では、coveredよりopenedが多い。
つまり音→意味変換が迅速に行われた
その上で視覚的に場所を覚えることができる
openedで成績が伸びたと考察

失語群では、coveredとopenedの差がない
→失語群でも視覚的に場所を覚えることが
できるにも関わらず、成績差がなかった。
失語群は音から意味への処理が遅い可能性

通常の物品操作「これ」物品操作
失語群3.4/108.9/10
口頭命令の名詞を「これ」に変えての比較(単位:点)

方法:SLTA口頭命令を用いて
・検査内の名詞を「これ」に言い換えて実施
・通常のSLTA口頭命令検査を実施


結果
失語症群では口頭命令の検査平均点が3.40
「名詞をこれに言い換えた」検査の平均点は8.90に上昇し、顕著な差を認めた。


考察
「名詞をこれに言い換えた」検査では
問題文中の物品を検査が指示するため、
物品の「音→意味変換」処理が不要となり成績が上昇したと考えられる。

3秒2秒1秒
失語群16/3011/302/30
健常群✖︎✖︎30/30
刺激間隔を変化させた際の対象群の差(単位:個)

方法:等速・連続絵カード選択プログラム
デジタル教材を作成し、音声提示にて実施。
一定の間隔で音声を提示し、
合致する絵カードを1/6選択してもらう。

最大で30問まで提示し、誤れば即終了。
音声の提示間隔は3秒、2秒、1秒の
3パターンを行った。

下記にSTたあが想像で作成した例を提示

等速・連続絵カード選択プログラム(例)



結果
失語群は
・3秒16.1正答
・2秒11.4正答
・1秒2.0正答で
1秒のみ有意に低下した

健常群は、1秒のみ実施30.0の全問正答

失語群と健常群では、
1秒での正答数の結果に有意な差を認めた。


考察
健常群では、音→意味変換は1秒で可能。
しかし、失語群は1秒になると
有意に音→意味変換が困難になる。

失語症者には連続的聴覚処理の視点をもった評価と訓練を

  • 失語群は、音→意味変換が遅い
  • 文レベルの理解能力低下に影響を及ぼしている可能性あり
  • 1個/秒で音→意味変換可能になれば、口頭命令の成績向上が期待できる

パワポ教材「連続的聴理解訓練」を紹介

「音→意味変換を1個/秒で行う能力」
「連続的な聴覚的処理能力」が
文レベルの聴覚的理解能力には必要
です。

これをもとに
私が考えたPowerPoint教材を紹介します。

結論:PowerPoint教材で提示間隔を一定にした聴理解訓練

3秒間隔での連続的聴理解訓練
2秒間隔での連続的聴理解訓練

初めから1秒の連続的な処理は難しい。
まずは3秒から慣れていきましょう。
0.5秒ずつ短くして1秒処理を目指します

パワポを使えば、
提示間隔を一定にしての音声刺激が可能
毎回絵カードを変更が可能である

呼称訓練でも0.5秒ずつ短くすることで効果が出ている

連続的処理を0.5秒ずつ短くする方法は、
呼称時の喚語速度向上を目的とした訓練
「RISP法」を参考にしたやり方

RISP法は、当初3秒での呼称を求め、
0.5秒ずつ呼称完了時間を短く
最後には1秒での呼称を求る訓練法

約0.5秒のため患者は潜時が短く
なっていることに気付きません。
ただし、喚語速度は速くなっていきます。

処理速度が関係する本課題でも
0.5秒ずつ時間を短くする
方法を取り入れています

パワポ教材の注意点

教材を利用者様が実施している時は、
STは正答の有無を確認してください。
連続正答数が重要なデータになります。

文献では、何問正答したかではなく、
連続で何問正答したかに注目しています。

10個連続正答で次の速さに上げていく
(私見であり、明確な基準はありません)

文献では、
注意障害がある方は除いています。
そのため、注意障害がある方に対して
本教材は効果がない可能性があります。

文献では、注意障害の評価法にBAADを用いていますので、参考にしてください。
BAADの詳しい解説はこちら

パワポ教材:連続的聴理解訓練のメリット、デメリット

メリットデメリット
毎回絵カードが変化

間隔を0.5秒単位で変更可能

患者の観察評価が可能

処理速度に着目した新訓練
注意障害の方には
適応がない可能性

機械音のため難聴者は
聞きにくい可能性有

まだ研究段階な訓練
連続的聴理解訓練のメリット/デメリット

まとめ

本記事では、連続的聴覚処理課題の
パワポ教材を紹介させていただきました。

文献では、健常群に比べて失語群の方が、
連続的な処理が苦手との報告があります。

そのため、文理解を促進するためには、
聴覚性把持力だけでなく、
処理速度にも着目する必要があります。

失語症への処理速度に着目する論文は、
連続的聴覚処理以外に
呼称や音読でも多く見られています。

呼称の喚語速度を改善する訓練は
こちらをご覧ください。


連続的聴覚処理課題(デジタル教材)に
興味がある方は、下記より詳しい内容を
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