このページでは、
聴覚的理解における
ロゴジェンモデルの
意味照合と意味システムについて
説明を行います。
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/08/A9410AF0-3254-40BB-AAC9-A0DE506DD115-300x242.jpeg)
✔︎ 意味システムとは、
言葉の意味が貯蔵されている場所
✔︎ 意味システムの障害を
意味障害と呼ぶ
✔︎ 意味障害になると
読解は不良、聴理解も不良となる
✔︎ 意味照合とは、
単語を意味システムへ繋ぐ経路
✔︎ 聴覚的理解における
意味照合の障害を語義聾と呼ぶ
✔︎ 語義聾では、読解は良好だが
聴理解が不良となる
意味システムと意味照合
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/06/0D3159AC-2C50-4396-9236-CB109BAB7E26-300x240.jpeg)
意味システムとは
言葉の意味が貯蔵されている場所が
意味システムであると言われている。
「犬」の絵を見て
・ペットの代表
・散歩に行く
・尻尾を振る
・ワンワンと鳴く
などの情報がブアーっと想起されるのは、
意味システムが働いているからといえる。
意味照合とは
出力語彙辞書と意味システムを繋ぐ処理を
意味照合と呼ぶ。
小嶋氏のモデルでは、
出力語彙辞書から意味システムへの経路は
見掛け上1つである。
しかし、
実際には読解と聴理解では
異なるルートが存在する。
そのため
✔︎ 読解では意味システムに到達できる
(=読解の意味照合が良好)
✔︎ 聴理解では意味システムに到達できない
(=聴理解の意味照合は不良)
という事象が起こり得る。
意味システムの障害は
「意味障害」
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/08/D0635AD8-21BE-4256-A37F-8D7128CE78AB-300x240.jpeg)
意味障害とは
意味システムが障害されている場合に、
「意味システムの障害」「意味障害」
と呼ばれる。
✔︎ 呼称、聴理解ともに困難さが出現
→どちらも意味システムを通るため
✔︎ 読解、聴理解の両者で低下あり
→どちらも意味システムを通るため
✔︎ 心像性の高低で正答率の差が出現
→意味システムは心像性と関係あり
※心像性とは「イメージのしやすさ」
✔︎ 呼称や聴理解課題で
カテゴリー特異性を認める場合もある
意味障害になると、
犬の絵を見ても、
情報がイキイキと想起されません。
そのため、
言葉の意味の把握が必要な
✔︎単語の聴理解
✔︎漢字単語の読解
✔︎呼称などは
正答しないという症状が出現します。
一方で復唱は、
意味を理解できなくても可能です。
つまり、意味障害があっても
復唱ができる方は存在します。
また、
意味障害の症状の一つとして、
Aカテゴリーの意味システムは良好
Bカテゴリーは意味障害があるという
カテゴリー特異性を認める症例も存在します。
意味障害の検査法
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/09/B7DB6A8F-16C3-401A-BEF5-97696C69D929-300x207.jpeg)
✔︎ 迂言が出現する場合は、
意味障害ではない可能性がある
→迂言の出現には意味の活性化が必要
✔︎ TLPAの類義語判断検査で、
95%以上の正答率
=意味システム良好
(音声提示、文字提示の片方のみでOK)
✔︎ 類義語判断検査で、
音声&文字にて95%正答未満
=意味障害あり
✔︎ TLPAの意味カテゴリー別名詞検査で
カテゴリー特異性を調べることが可能。
✔︎ SLTAの単語の聴理解や読解が全問正答
→意味システム良好とは言い切れない
(課題の難易度が簡単すぎる)
⚠️ 上記は全て ⚠️
⚠️音韻聾や語形聾を否定した上での判断⚠️
意味障害の訓練法
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/09/2817B444-A9E0-4C93-8FAA-F7A9B3D27AB9-300x240.jpeg)
意味障害には「意味を深く考える課題」が
効果的だと言われています。
どの課題でも、
この視点で取り組んでいただければと思います。
同カテゴリーの聴理解
よく行われる聴理解課題も
同カテゴリーにすることで、
深く意味を考えることにつながります
同カテゴリーの読解
こちらは読解の課題です。
例)
猫と犬は、
✔︎ 代表的なペット
✔︎ 室内で飼うこともある
✔︎ 4本足の動物
は同じ点です。
「犬」と聞いたときに、
この程度の情報の想起だと、
犬と猫の区別がつかず誤答してしまいます。
しかし、
✔︎ ワンワン、ニャンニャン
✔︎ 噛み付く、ひっかく
などの違いを考えることで、
差を理解し、正答に至ることができます。
定義文の理解課題
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/09/54E010B0-526C-4C63-9E0F-362B9D31CE50-208x300.jpeg)
説明文を音声や文字提示して、
適した単語を選択する課題です。
定義文を読んで、単語を選択する中で、
単語の意味を深く考えることに繋がります。
この課題も同カテゴリーの単語にすれば
深く意味を考えていただけます。
定義文の教材を1から自作するのは
大変です。
「ことばの小箱様」にて
無料でプリントを配布しています。
ぜひ活用してください。
仲間はずれ課題
仲間はずれ課題では、
単語のカテゴリーを考える必要があります。
これにより、
深く意味を考えることにつながります。
私はよく、
宿題で課して
丸つけの時にカテゴリーを問う
という方法を行なっています。
対義語の想起課題
対義語を考えることも、
意味を深く考える課題になり得ます。
表出能力が必要になるので、
課題の難易度としてはレベルが高いです。
選択肢を提示して選んでもらえば、
難易度の調整ができるかもしれません。
意味照合の障害は
「語義聾」
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/08/D0635AD8-21BE-4256-A37F-8D7128CE78AB-300x240.jpeg)
語義聾とは意味システムへの
アクセスが障害される
意味システムは保たれており、
音韻照合と語彙照合の障害がないのに
聴覚的理解能力の低下が起こる場合がある。
=語義聾
ここからは「語義聾」について
説明をしていきます。
語義聾
=意味照合の障害である
意味照合の障害
=入力語彙辞書から意味システムへの
アクセスが障害されている
アクセス(意味照合)のみが障害
されているので、
✔︎ 音韻照合○
✔︎ 語彙照合○
✔︎ 意味システム○
ということである。
⬇️文で説明すると⬇️
語義聾とは、
音声提示された単語の
音韻は認知でき、
実在語であることも理解でき、
なおかつ
意味システムは保たれている。
しかし、
入力語彙辞書から意味システムへの
アクセスがうまくいかない障害である。
✔︎ 読解は可能だが聴理解で困難さ出現
→聴覚的意味照合のみ障害されるため
✔︎ 音韻照合は保たれているので
単語や非語復唱ができることもある。
✔︎ 語彙照合の障害はないので、
復唱で変な区切りかたをしない。
語義聾の検査法
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/09/B7DB6A8F-16C3-401A-BEF5-97696C69D929-300x207.jpeg)
語義聾の検査法は2段階あります。
① 音韻照合、語彙照合が
保たれていることを確認
② 類義語判断検査で
読解と聴理解に差がある
①と②を満たす場合
語義聾である
音韻照合の確認は
✔︎ 非語の復唱
✔︎ 単音の聴理解
✔︎ 単音の復唱など
を使います。
語彙照合の確認は
✔︎ 語彙判断検査
(=実在語と非語の異同弁別)
を使います
類義語判断検査では
✔︎ 読解は良好
✔︎ 聴理解は不良
を確認しましょう。
これらにより、
「音声提示された単語の
音韻を認知できており、
実在語であることも理解できており、
意味システムも保たれているにも関わらず、
聴覚的に理解ができない」ことが
示されたことになります。
語義聾の訓練法
![](https://st-ta-output.com/wp-content/uploads/2022/09/2817B444-A9E0-4C93-8FAA-F7A9B3D27AB9-300x240.jpeg)
語義聾については、
海外で紹介されている、
暗示的/明示的聴覚セラピーという
手法を紹介します。
参考文献
Francis DR, Riddoch MJ & Humphreys GW (2001a).
Cognitive rehabilitation of word meaning deafness
定義文を黙読
→単語書字
暗示的聴覚セラピーという手法の1つ。
単語の定義を黙読し、
意味を覚えるようにする。
その後、
単語の意味を考えながら4回書く。
文字単語の類義語判断
暗示的聴覚セラピーという手法の1つ。
3つの単語を黙読し、
その中の1つと
意味が類似する語を2つの中から
選ぶ。
定義を聴く
→音読する
明示的聴覚セラピーという手法の1つ
音声にて定義を聴きながら、
定義を音読し、
意味を覚えるようにする。
その後、単語の意味を考えながら
4回復唱する。
音声・文字単語の類義語判断
明示的聴覚セラピーという手法の1つ
3つの単語を聞いて、
さらに音読もする。
その中の1つと
意味が類似する単語を1つ
選択する。
おわりに
今回は、
意味システムの障害や
意味照合の障害(=語義聾)についての
説明を行いました。
かなりボリューミーでした。
説明が分かりづらくて申し訳ありません。
何か質問があれば、
DMくださればと思います。
下記に参考書籍を載せておきます。
ここまで読んでくださり、
ありがとうございました。
\まずはここから/
\なるほど失語症との親和性抜群/
\症例や訓練法が多彩/
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