【小嶋】認知神経心理学的モデルの意味システムとは?【失語症】

ロゴジェンモデル

このページでは、
聴覚的理解における
ロゴジェンモデルの
意味照合と意味システムについて
説明を行います。

要点

✔︎ 意味システムとは、
 言葉の意味が貯蔵されている場所

✔︎ 意味システムの障害を
 意味障害と呼ぶ

✔︎ 意味障害になると
 読解は不良、聴理解も不良となる


✔︎ 意味照合とは、
 単語を意味システムへ繋ぐ経路

✔︎ 聴覚的理解における
 意味照合の障害を語義聾と呼ぶ

✔︎ 語義聾では、読解は良好だが
 聴理解が不良
となる

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意味システムと意味照合

意味システムとは

言葉の意味が貯蔵されている場所
意味システムであると言われている。

「犬」の絵を見て
・ペットの代表
・散歩に行く
・尻尾を振る
・ワンワンと鳴く
などの情報がブアーっと想起されるのは、
意味システムが働いているからといえる。

意味照合とは

出力語彙辞書と意味システムを繋ぐ処理
意味照合と呼ぶ。

小嶋氏のモデルでは、
出力語彙辞書から意味システムへの経路は
見掛け上1つである。

しかし、
実際には読解と聴理解では
異なるルートが存在する。

そのため
✔︎ 読解では意味システムに到達できる
(=読解の意味照合が良好)

✔︎ 聴理解では意味システムに到達できない
(=聴理解の意味照合は不良)

という事象が起こり得る。

意味システムの障害は
「意味障害」

意味障害とは

意味システムが障害されている場合に、
「意味システムの障害」「意味障害」
と呼ばれる。

意味障害の症状

✔︎ 呼称、聴理解ともに困難さが出現
 →どちらも意味システムを通るため

✔︎ 読解、聴理解の両者で低下あり
 →どちらも意味システムを通るため

✔︎ 心像性の高低で正答率の差が出現
 →意味システムは心像性と関係あり
 ※心像性とは「イメージのしやすさ」

✔︎ 呼称や聴理解課題で
 カテゴリー特異性を認める場合もある


意味障害になると、
犬の絵を見ても、
情報がイキイキと想起されません。

そのため、
言葉の意味の把握が必要な
✔︎単語の聴理解
✔︎漢字単語の読解
✔︎呼称などは
正答しないという症状が出現します。

一方で復唱は、
意味を理解できなくても可能です。
つまり、意味障害があっても
復唱ができる方は存在します。

また、
意味障害の症状の一つとして、
Aカテゴリーの意味システムは良好
Bカテゴリーは意味障害があるという
カテゴリー特異性を認める症例も存在します。

意味障害の検査法

✔︎ 迂言が出現する場合は、
 意味障害ではない可能性がある
 →迂言の出現には意味の活性化が必要

✔︎ TLPAの類義語判断検査で、
 95%以上の正答率
 =意味システム良好
(音声提示、文字提示の片方のみでOK)

✔︎ 類義語判断検査で、
 音声&文字にて95%正答未満
 =意味障害あり

✔︎ TLPAの意味カテゴリー別名詞検査で
 カテゴリー特異性を調べることが可能。

✔︎ SLTAの単語の聴理解や読解が全問正答
 →意味システム良好とは言い切れない
 (課題の難易度が簡単すぎる)

⚠️      上記は全て      ⚠️
⚠️音韻聾や語形聾を否定した上での判断⚠️

意味障害の訓練法

意味障害には「意味を深く考える課題」が
効果的だと言われています。

どの課題でも、
この視点で取り組んでいただければと思います。

同カテゴリーの聴理解

よく行われる聴理解課題も
同カテゴリーにすることで、
深く意味を考える
ことにつながります

同カテゴリーの読解

こちらは読解の課題です。

例)
猫と犬は、
✔︎ 代表的なペット
✔︎ 室内で飼うこともある
✔︎ 4本足の動物
は同じ点です。

「犬」と聞いたときに、
この程度の情報の想起だと、
犬と猫の区別がつかず誤答してしまいます。

しかし、
✔︎ ワンワン、ニャンニャン
✔︎ 噛み付く、ひっかく
などの違いを考えることで、
差を理解し、正答に至ることができます。

定義文の理解課題

「ことばの小箱様」より引用

説明文を音声や文字提示して、
適した単語を選択する課題です。

定義文を読んで、単語を選択する中で、
単語の意味を深く考えることに繋がります。

この課題も同カテゴリーの単語にすれば
深く意味を考えていただけます。

定義文の教材を1から自作するのは
大変です。

「ことばの小箱様」にて
無料でプリントを配布
しています。
ぜひ活用してください。

ことばの小箱のサイトへ

仲間はずれ課題

仲間はずれ課題では、
単語のカテゴリーを考える必要があります。

これにより、
深く意味を考えることにつながります。

私はよく、
宿題で課して
丸つけの時にカテゴリーを問う
という方法を行なっています。

対義語の想起課題

対義語を考えることも、
意味を深く考える課題になり得ます。

表出能力が必要になるので、
課題の難易度としてはレベルが高いです。

選択肢を提示して選んでもらえば、
難易度の調整ができるかもしれません。

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意味照合の障害は
「語義聾」

語義聾とは意味システムへの
アクセスが障害される

意味システムは保たれており、
音韻照合と語彙照合の障害がないのに
聴覚的理解能力の低下が起こる場合がある。
=語義聾

ここからは「語義聾」について
説明をしていきます。

語義聾
意味照合の障害である

意味照合の障害
入力語彙辞書から意味システムへの
アクセスが障害
されている

アクセス(意味照合)のみが障害
されているので、
✔︎ 音韻照合○
✔︎ 語彙照合○
✔︎ 意味システム○

ということである。

⬇️文で説明すると⬇️

語義聾とは、
音声提示された単語の
音韻は認知でき、
実在語であることも理解でき、
なおかつ
意味システムは保たれている。

しかし、
入力語彙辞書から意味システムへの
アクセスがうまくいかない障害である。

語義聾の症状

✔︎ 読解は可能だが聴理解で困難さ出現
 →聴覚的意味照合のみ障害されるため

✔︎ 音韻照合は保たれているので
 単語や非語復唱ができることもある。

✔︎ 語彙照合の障害はないので、
 復唱で変な区切りかたをしない。


語義聾の検査法

語義聾の検査法は2段階あります。
① 音韻照合、語彙照合が
 保たれていることを確認


② 類義語判断検査で
 読解と聴理解に差がある

①と②を満たす場合
語義聾である


音韻照合の確認は
✔︎ 非語の復唱
✔︎ 単音の聴理解
✔︎ 単音の復唱など
を使います。

語彙照合の確認は
✔︎ 語彙判断検査
(=実在語と非語の異同弁別)
を使います

類義語判断検査では
✔︎ 読解は良好
✔︎ 聴理解は不良
を確認しましょう。

これらにより、
「音声提示された単語の
音韻を認知できており、
実在語であることも理解できており、
意味システムも保たれているにも関わらず、
聴覚的に理解ができない」ことが
示されたことになります。

語義聾の訓練法

語義聾については、
海外で紹介されている、
暗示的/明示的聴覚セラピーという
手法を紹介します。

参考文献
Francis DR, Riddoch MJ & Humphreys GW (2001a).
Cognitive rehabilitation of word meaning deafness

定義文を黙読
→単語書字

暗示的聴覚セラピーという手法の1つ。

単語の定義を黙読し、
意味を覚えるようにする。

その後、
単語の意味を考えながら4回書く。

文字単語の類義語判断

暗示的聴覚セラピーという手法の1つ。

3つの単語を黙読し、
その中の1つと
意味が類似する語を2つの中から
選ぶ。

定義を聴く
→音読する

明示的聴覚セラピーという手法の1つ

音声にて定義を聴きながら、
定義を音読し、
意味を覚えるようにする。

その後、単語の意味を考えながら
4回復唱する。

音声・文字単語の類義語判断

明示的聴覚セラピーという手法の1つ

3つの単語を聞いて、
さらに音読もする。

その中の1つと
意味が類似する単語を1つ
選択する。

おわりに

今回は、
意味システムの障害や
意味照合の障害(=語義聾)についての
説明を行いました。

かなりボリューミーでした。
説明が分かりづらくて申し訳ありません。

何か質問があれば、
DMくださればと思います。

下記に参考書籍を載せておきます。

ここまで読んでくださり、
ありがとうございました。

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